お役立ち情報2019年05月20日

ゼニス 時計探訪 ~有名ブランドの歴史を知ろう~ Vol.13

***** ゼニス ZENITH *****

ゼニストップ

「エル・プリメロ」を代表するエレガントなデザインが人気のゼニス(ZENITH)。美しい外観だけでなく、創業時から続く自社一貫製造の職人気質な一面も注目すべきポイントである。今回は、スイスの名門腕時計ブランド、ゼニスの知られざる魅力を紹介します。

 

1 ゼニスとは

2 ゼニスの魅力

3 エル・プリメロの復活

4 ゼニスの定番モデルを紹介

5 機械式時計で342年ぶり新発明

6 まとめ

 

1 ゼニスとは

ジョルジュ・ファーヴル=ジャコ

1865年、ゼニスは天才時計技師『ジョルジュ・ファーヴル=ジャコ』(1843-1917年)によって設立されたマニュファクチュール・ド・モントレ社を前身とするゼニス。同社は1900年に画期的なリューズ巻きの懐中型ムーブメントを開発し、以後も品質とコストパフォーマンスのバランスに優れたムーブメントを開発してきました。

特に先述のムーブメントを搭載した時計はエスペラント語で時計作りの「天頂」を意味する「ゼニス」と命名され、1903年にはパリ万国博覧会で金賞を受賞。1911年にはそのブランド名が社名にも採用され、ファブリック・デ・モントル・ゼニス社と改称されました。

1860年代当時の一般的な時計製造は、職人たちが近辺の工房や自宅にて、それぞれ別々に作業を行っていが、ゼニス創業者のジョルジュ・ファーヴル=ジャコは、時計とは複雑なメカニズムを構成する部品が同時に作動するものであるにもかかわらず、分業で製造されている現状に疑問を抱いていた。

ひとつ屋根の下に全ての工程を集約させるこのような製造体系は、正確な時間を把握したいという、当時の人たちの強いニーズに応える腕時計の開発に大きな前進をもたらした。

ロレックスやオメガ、パネライなど、今でこそ自社工場でムーブメントを製造するマニュファクチュール体制が一種のブランドステータスとなっているが、その礎を築いたのがゼニスである。

 

 

2 ゼニスの魅力
初代「エル・プリメロ」ムーブメント

初代「エル・プリメロ」ムーブメント(1969)

 

 

「ゼニス」その名を有名にしている一番の理由はクロノグラフムーブメント『エル・プリメロ』の存在です。

ゼニスが開発した世界初の自動巻きクロノグラフ「エル・プリメロ」

ムーブメントの名前でもあり、モデル名でもある「エル・プリメロ」。1969年に発表された初代エル・プリメロムーブメントは、世界初の一体型自動巻きクロノグラフとして大きな話題を呼んだ。ゼニスの「エル・プリメロ」は、今もなお”量産型クロノグラフとして世界最高峰のムーブメント”驚くことにエル・プリメロは誕生から40年以上経った今でも、量産型クロノグラフとして世界最高レベルのムーブメントと呼ばれている。複雑なメカニズムを搭載したこのムーブメントは、毎時36,000回の高速振動を誇る。多くの時計が28,800振動(1/8秒単位の計測)というスペックに留まるなか、1/10秒単位の計測が可能な3,6000振動は頭ひとつ飛び抜けた性能である。さらに、通常は振動数が増えれば増えるほどパワーリザーブが短くなるという短所があるが、卓越した技術力によって50時間を超えるパワーリザーブを実現。エル・プリメロは、ハイビートと長時間パワーリザーブの両立に成功したムーブメントなのだ。

このスペックは、決して現在のアップデートされたものではなく、45年前の初期バージョンの頃から備えていたもの。いかにゼニスのムーブメント開発が時代を先取りしていたかがおわかりでしょうか。

ハイビートだと何が良いのか?

時計の心臓部であるテンプの動きが早いということになるのですが、これは回っているコマと一緒で、早く回転している方が衝撃などあっても安定して回ります。逆にゆっくり回転しているコマは衝撃があると倒れてしまいます。時計のテンプも一緒なのです。早く回転している方がより安定した精度を出しやすいのです。ただ、テンプがハイビートになると問題点も出てきます。それはパワーリザーブが短くなってしまう。そして歯車のかみ合う回数がより多くなる為、歯車の磨耗を懸念しなければいけなくなってきます。

それらをクリアし、製品化されたのがゼニスの「エル・プリメロ」なのです。

また、エル・プリメロは、1988~2000年ごろに製造されたロレックスのデイトナ(型式16520など)に搭載されました。ロレックスと言えば、「石橋を叩いて渡る」様な姿勢をもつメーカーであり、実用面において絶対的な信頼がないと採用に踏み切らないメーカーです。そして、ロレックスもマニュファクチュールメーカーであり、当時はクロノグラフ以外のムーブメントは全て自社製でした。つまり、当時ロレックス唯一の社外製ムーブメントがエル・プリメロでしたので、注目度も高くなります。採用基準の高いであろうロレックスに採用されました、ロレックス唯一の社外ムーブメントという事実が、エル・プリメロに箔をつけたのです。

デイトナ
デイトナ(Ref.16520)に搭載されたエル・プリメロのムーブメント

デイトナ(Ref.16520)に搭載されたエル・プリメロのムーブメント。ちなみにロレックスの要望により、振動数は本来の3,6000回から2,8800回に下げられている。

 

 

3 エル・プリメロの復活

ゼニスは1970年代のクオーツ時計の台頭によって経営が悪化し、アメリカ企業に買収されました。その時に機械式時計の製造中止が決まり、エル・プリメロもそのノウハウを全て破棄するように命じられます。そしてゼニスのオーナーが交代し、機械式時計の需要の回復が見込めるようになった1980年代、エル・プリメロを復活させる話が浮上します。ですが、もう図面・部品・工具・機材などのノウハウはもうありません。しかし、なんとシャルル=ベルモ氏という一人の技術者がエル・プリメロのノウハウを密かに保管していました。彼はエル・プリメロの開発に携わった人物で、既に隠居生活でしたが、同社の近くに居住していました。ベルモ氏に聞くと、どうやら経営判断に背いて独断でノウハウを隠したそうです。それも、他の同僚に迷惑をかけないように、自分の身内だけで行ったそうです。

そして1984年、晴れてエル・プリメロは復活します。

まさに、シャルル=ベルモ氏なくして名機エル・プリメロは存在しなかったのです。

現在、シャルル=ベルモ氏は“ゼニスの英雄”として語られています。エル・プリメロは、ドラマのようなストーリーを持っているのです。

「エル・プリメロ」ムーブメントの設計図

「エル・プリメロ」ムーブメント設計図

 

 

4 ゼニスの定番モデルを紹介

 

ゼニス「エル・プリメロ クロノマスター・パワーリザーブ」

9時位置にスモールセコンド、6時位置にパワーリザーブインジケーターを設けたエル・プリメロの中でも人気の高いモデル。サンレイ装飾を施したシルバー文字盤にムーブメントの心臓部が見えるオープンデザインというエル・プリメロの王道デザインは長年愛用しても飽きることはない。
エル・プリメロ クロノマスター・パワーリザーブ

 

 

 

 

ゼニス「エル・プリメロ シノプシス」

伝統のオープンワークデザイン以外は3針のみというエル・プリメロの中ではシンプルなモデル。シルバーの文字盤に浮かぶインデックスと針は、ゴールドプレート加工のファセットカットを施されており高級感抜群。シンプルながらも毎時3,6000振動とパワーリザーブ50時間以上のパワフルな機能はそのまま。
エル・プリメロ シノプシス
 

 

 

 

ゼニス「エル・プリメロ クロノマスター・グランドデイト」

2時位置にビッグデイト表示、そして6時位置にムーン&サンフェイズが配されたラグジュアリーモデル。ディープブルーのカラーが、文字盤に配された様々なギミックの存在感を引き立てている。
エル・プリメロ クロノマスター・グランドデイト
 

 

 

 

ゼニス「エリート ウルトラシン」

エル・プリメロと対をなすゼニスのもう一つのフラッグシップモデル「エリート」。厚さわずか8.30mmのウルトラスリムケースがドレス感を際立たせる。アプライドアワーマーカーをあしらったボックス型文字盤がさり気ないお洒落さを演出。振動数は毎時28,800回とエル・プリメロよりは落ちるが充分に高水準。パワーリザーブはエル・プリメロと同じ50時間を誇る。
エリート ウルトラシン黒

 

 

 

 

ゼニス「エリート ウルトラシン」

同じエリートのシリーズでもこちらは全く異なる表情を見せる。ラッカー仕上げのホワイト文字盤にブラック転写されたアラビックインデックスがこの上なくクラシック。ロジウムプレートにファセットカットを施した針も美しい。
エリート ウルトラシン

 

 

 

 

5 機械式時計で342年ぶり新発明

ゼニスが機械式時計の精度を大幅に高めるムーブメントを開発しました。一定の速さで時を刻む調速機構に、従来のテンプ(はずみ車)とひげぜんまい(金属コイル)を使った機構に代わり、単結晶シリコン製の新型オシレーター(発振器)を採用した。従来に比べて10倍の精度で、誤差を1日平均0.3秒に抑えることに成功しました。。

テンプとひげぜんまいによる調速機構が1675年に発明されてから、342年ぶりとなる新たな機構です。全ての機械式時計が1675年に発明されたシステムを採用していました。これまでの300年以上の間、新機構の開発に挑戦した人はたくさんいたと思いますが、ゼニスが初めて開発に成功しました。

全く異なる機構としては、(発振器に水晶を使う)クオーツ式が発明されましたが、これは電池を使うので機械式とは違う分野です。今日まで存在する時計の中でも最も正確です。

新機構には大きな特徴があります。まず摩擦がありません。このため(この機構については)注油の必要がありません。シリコン素材の採用によって、温度や磁気による影響もありません。そして最大の特徴は、これまで存在してきた時計の中でも最も正しい精度を誇っています。

通常の機械式時計は、60時間を経過すると精度が落ちてきます。調速機構にぜんまいを使っているためです。これに対して、ゼニスの新機構は(ぜんまいを使わないため)精度が24時間全く変わりません。

単結晶シリコンの新型オシレーター
単結晶シリコンの新型オシレーター
 
 
 

新型オシレーターを搭載したムーブメント
新型オシレーターを搭載したムーブメント
 
 
 

新機構を搭載した腕時計「デファイ・ラボ」

新機構を搭載した腕時計「デファイ・ラボ」
 
 
 

6 まとめ

今回ご紹介したゼニスの時計は、ROLEXやオメガの様なメジャーな人気を博しているとはいえませんが、時計産業の本場スイスで確固たる地位を築き、150年以上に渡って時計愛好家から支持されている重要なブランドです。「他の誰かとは違う一本」「ただユニークなだけでなく、王道かつ上質でありながら独自の存在感を放っている一本」を探している人には生涯の友となるポテンシャルを秘めた逸品がゼニス(ZENITH)だと私は思います。

デザイン的にぐっとくるモデルがあれば、後悔する前に買ってしまうのも手かもしれないですね。
 
 
 

時計記事まとめ
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