地金の歴史と近年の相場の動き

1.ゴールド(金)Au

金の色は、金に含まれる不純物の量と種類によって変わります。自然金の色は典型的な 黄金色ですが、宝飾品として使うために、他の金属とまぜて合金を作り、色や硬さを 変える事ができます。添加する金属は、プラチナ、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、 ニッケル、亜鉛などで、淡色の金、またはホワイトゴールドになります。銅を加えると赤色、ピンク黄色、鉄の場合は青色を帯びます。金の純度は純金の含有率で表わし、カラット数「K」で示します。 宝飾品に使われるのはK9 純度37.5%以上からK14、K18、K22、純金のK24までです。 多くの国で、金、純度を表すために、ホールマーク「純度認証極印」が押印されています。

2.プラチナ(白金)Pt

プラチナはゴールドと同じく、柔らかい素材のため加工しやすい金属です。稀少性が高いこと、そして加工技術が求められることから高額になる傾向があります。 プラチナは白金と呼ばれるように白い光沢が特徴です。シャープな輝きを放ちクールな印象を与えます。ダイヤモンドのように透明感のある宝石と非常に相性が良い地金だと言えます。 プラチナも純度によりいくつかの種類があります。結婚指輪など耐久性を求める場合は、Pt850以上のものが理想で、日本では主にPt900が使用されています。 銀やパラジウム等などの合金です。

3.シルバー(銀)Ag

シルバーはゴールドやプラチナと比べると、カジュアルな地金です。 白く光る光沢が特徴的で、加工しやすい性質を持っています。しかし変色しやすいため、専用クロスで磨くなど、こまめなお手入れが必要です。

 

 

次に地金として人気がある金について調べてみました。

 

 

① 金「地金」の歴史

金が発見されたのは、今から7000年前とも8000年前とも言われています。当時はもちろん金鉱石から金を取り出す(精製する)技術などがまだありませんでした。 そして砂金が発見された川の上流にある山などから、露頭の自然金(ナゲット)の形で発見されたものと思われます。

金が精製あるいは加工された形で歴史に登場するのは、古代エジプト王朝時代(BC4000~BC332年)です。古代エジプト王朝時代のファラオ(王)たちは、太陽を主神とし、太陽のシンボルとして金を崇拝していました。

そしてやがて金は、「富と権力の象徴」としての意味も合わせ持つようになったのではないかと思われます。ファラオたちは、死に際しても金を手放すことはありませんでした。死後の世界を信じた彼らは、金が何ものにも侵されない性質をもつことから、みずからの不変不滅を祈って黄金のマスクをつけ、黄金の棺に入り、黄金の装身具に囲まれていました。 一般市民が金を持つことは許されておらず、持っているものはファラオに 差し出していたのです。もし隠して見つかると処刑にされたエピソードも残っているようです。

最古の金貨

世界で初めて金貨が作られたのは、紀元前7世紀~6世紀頃と言われています。当時の小アジア(現在のトルコ西部)に存在していたリディア王国で発行された金貨が最初であると言われています。しかし一方で異説もあり、それによれば世界最古の金貨は紀元前11世紀までさかのぼると言います。紀元前11世紀当時の中国で公式に金貨が発行された形跡があるらしいのです。どちらの説が正しいのかわかりませんが、いずれにしても気の遠くなるほど昔であることに違いはありません。

リディア王の紋章であるライオンの頭部が打刻されています。通貨史での正式名称はエレクトロン貨。リディア金貨と言わずエレクトロン貨と言うのは、古代ギリシャ人がエレクトロン貨と呼んで珍重したことに由来するようです。金貨の素材に使われている天然の金銀合金の輝きや色合いが、エレクトロンすなわち琥珀に似ていたためだと言います。金の品位は30%から50%程度。重量単位は、スタテル (古代ギリシャの単位で1スタテルは14g~17gに相当)。1スタテルから1/96スタテルまで8種類があったようです。

世界の金産出量と順位

1.中国 約440トン 2.オーストラリア 約300トン 3.ロシア 約255トン 4.アメリカ 約245トン 5.カナダ 約180トン

2017年の世界全体の金産出量は3.150トンで、10年前と比べると770トン 増加しています。10年前まで世界1の金産出国であった南アフリカの産出量は 国内情報や電気供給の不安定化、鉱山施設の老朽化などが原因となり減少中 です。

金の埋蔵量

2017年の時点で、世界各国の埋蔵されていると考えられている金の量は次の通りです。

1.オーストラリア 約9,800トン 2.南アフリカ 約6,000トン 3.ロシア 約5,500トン 4.アメリカ 約3,000トン 5.インドネシア 約2,500トン

また現在年間需要のうち約1/3が市場リサイクルだそうです。

② 日本の歴史と金

金の国内(円建て)価格は、1973年4月の「金の輸入自由化」以降、市場の需給によって価格が決まる「変動相場制」へ移行しました。それ以前は、日本銀行が決めた「公定価格(固定相場)」でした。 この背景には、1971年8月に「金と米ドルの固定比率での交換停止を発表したニクソン・ショックによって米ドル・金本位制(金を米ドルの価値の基準とする制度)がまず崩れ、その後、1973年に主要通貨の交換レートが変動相場制に変わったことで、金の国際(ドル建て)価格が変動相場に変わりました。これを機に、金の国内価格も変動相場制になったのです。 では、金はどんなときに価格が上がったり下がったりするのでしょうか。変動相場制に移行した1973年以降、45年間にわたる国内価格の推移を、大きなイベントごとに振り返ってみます。

1 第一次オイルショック(1973年)

1973年10月、第4次中東戦争(イスラエルとアラブ諸国との間で発生した戦争)が勃発。石油価格が高騰し、石油輸入国の経済に大きな打撃を与えた第一次オイルショックが発生、高インフレーション(物価の高騰)を招きました。それに伴って金の価格も、1973年から1974年にかけて急上昇しました。

2 第二次オイルショック、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)

さらに、1978年12月に起きたイラン革命(独裁政権を倒し、イスラム教に基づく共和国を樹立した革命)をきっかけに第二次オイルショックが発生。加えて、1979年12月に旧ソ連がアフガニスタンを侵攻(ソ連が親ソ政権を支援し、イスラム原理主義ゲリラを抑えるために侵攻)。冷戦(第二次世界大戦後の米国とソ連の関係)の緊張が高まる中、安全資産として金が買われ、価格が急騰しました。1980年1月に6,495円をつけました。

3日本バブル経済崩壊

1989年12月29日に日経平均が史上最高値3万8,915円を記録。その後、日本ではバブル経済が崩壊し、後に「失われた10年」と呼ばれる経済低迷期が続きました。

4 米国同時多発テロ(2001年)

2001年9月11日、米国同時多発テロが発生。米国と米ドルへの信頼が揺らぎ、ドル建て資産から金への逃避が一気に加速しました。ちょうどこの頃、米国ではITバブルが崩壊し、金の価値を見直す動きが強まっていたこともあり、金相場は上昇トレンドへ転換していきました。

5リーマン・ショック(2008年)

当時、米国第4位の投資銀行だったリーマン・ブラザーズが2008年9月に破綻したことをきっかけに金融危機が世界に波及。その後、世界各国の経済は連鎖的に不況へと陥っていきました。

6 ギリシャ・ショック(2010年)

2009年10月にギリシャの財政赤字が公表数字を大幅に上回ることが判明。その後、2010年にギリシャ国債が投機的水準まで格下げされ暴落。ギリシャの財政不安がユーロ圏経済、さらに世界経済を巻き込んだ大混乱を引き起こしました。

7 英国、EU離脱決定(2016年6月)

英国が2016年6月に実施したEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票の結果、離脱が決定。それを受け、世界同時株安、円高が進行し、金の国内価格が上昇しました。

8 米大統領選、トランプ氏勝利(2016年11月)

大方の予想に反してトランプ氏が勝利。一旦は株安・円高に振れたが、上下院とも共和党が制し、ねじれ解消となったことでトランプ氏の公約実現への期待が高まり、一転して急激なリスクオン相場に。国際価格は1,200ドルを大きく割り込みました。

9 北朝鮮のミサイルが日本上空を通過(2017年)

2017年8月29日、北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過し、Jアラートが発動。国内価格は3月の高値4553円を超え、4,700円台へ急騰しました。 こうした北朝鮮の度重なるミサイル実験や米国のシリア空爆を受け、世界的な地政学リスクが高まり、2017年9月には金の国際(ドル建て)価格が年初来高値を更新しました。

10新型コロナウイルス世界拡大 (2020年)            

新型コロナウイルスにより株価暴落、安全資産とされる金高騰2020年7月10日6,800円台へ 今後の金の動向が注目されます。

こうして振り返ってみると、戦争や紛争、金融・経済危機などが発生するたびに、金の価値を見直す動きが強まり、価格が上昇していることがわかります。

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